エピローグ
全てが終わって、
荒い息を交わしながら、エドワードはキスを落とす。
ずっと密着させた体を離すのは怖くて、
このまま溶けてしまえばいいのに、とウィンリィは涙をにじませながら
エドワードにしがみついた。
「あ」
上から重なるようにして体を押し付けていたエドワードが、
不意にウィンリィの胸の辺りに唇を押し当てる。
「い…っ」
針で刺すような、それでもどうしようもなく甘い痛みに、
ウィンリィは思わず声を漏らす。
白磁のように滑らかなウィンリィの肌が、
月の蒼い光にさらされて、エドワードが付けた痕をよりいっそう紅く浮かび上がらせる。
「ねぇ…」
少しばかりまだ乱れた息をそのままに、
ウィンリィはエドワードの頬に自分の頬を寄せるようにして
彼の首に腕を回す。
「前も思ったんだけど…。なんでそこにキスするの?」
「え?」
だから、と問い返してきたエドワードにウィンリィは説明しようとする。
前も同じところに同じようにキスをしていた。
「ああ…」
エドワードは思い返して、少し言葉をにごす。
なんで、とウィンリィはなおも聞いてきた。
「予約」
「は?」
エドワードがぽつんと落とした言葉に、ウィンリィは理解が追いつかない。
どういう意味?とウィンリィはなおも食い下がるので、
エドワードはだからだな、と照れたように言葉を続けた。
「ここに、心臓がある」
エドワードは少しばかり体を離して、
ウィンリィの目を覗き込むようにして言葉を継ぐ。
示した場所は、
ウィンリィの左胸。頂に近い所だ。そこに、紅い花びらがひとつ、散らされている。
「薬指を封されても、唇が嘘を言っても、
…ここだけはオレのもん、ってこと」
沈黙が落ちて、
エドワードはいたたまれなくなる。
そこで黙るなよな、とウィンリィの表情を読み取ろうとしたら、
不意に落ちてきた言葉はずるい、だった。
「ズルくねぇよ」
エドワードは静かに言った。
「オレは、いつも選択権が無いからな」
…たとえば最初のキス。あれだって無理矢理奪われたようなもんだ。
それでもあの甘美な感触は、焼きついて離れない。
ウィンリィはもう覚えていないかもしれないけれど。
「ずるい」
ウィンリィはなおも言った。
選べといわれた。
選んだつもりでも、選ばされてるってことなの?つまり。
ウィンリィの心情を読み取ったのか、
エドワードは軽く笑う。
「そ。…お前にもオレにも、最初から選択権なんて、ねぇよ」
選択するも何も、最初から心臓が教えてくれている。
まるでシグナルのように、痛く。
<了>
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いやぁもう、すいません。
初っ端から太字大フォントで謝る駄目管理人です。
upは遅れるわ、中身を見ればマフィアなんてどこ吹く風、ただの駆け落ち小説じゃないか!!て気分ですが。
ひとまず、5万打記念ということでアンケートをとった結果、頂いたリクエスト小説です。T様、ホントに有難う御座います!!そして、遅れまして本当にすいませんでした(平謝り)
とにもかくにも、初めて書いたパラレルなのですが、どこがマフィアだと反省しつつ、ちょびっとでも楽しんでもらえれば幸いです。5万打記念てことで、1本目は、絶対に書かなかったウィンリィ視点エロ、2本目はこれまた絶対書かなかったパラレル、という感じで少しいつもと違うことを致しました。とても楽しかったです。こんな管理人の妄想にいつも付き合ってくださって有難う、という感謝の気持ちを込めまして。これからも時間が許せばどうぞお付き合い頂ければコレ幸いです。
2005.5.3
karuna 拝
後書きが長くなりました。
エドウィンやらマフィアやらアルやら作成過程やらその他エトセトラ話は
コチラに。