「Switch」



…【注意】超小ネタ。やまもおちもいみもない極力ウィンリィ視点のエドウィン。妄想。
ただのべたべた会話です。
そこまで直接的表現はあんまりありませんがいちおう、苦手な方は逃げてください。






Switch





「電気、消して」





途端に、エドは面倒くさそうな顔をする。



ひだまり色の明かりに淡く照らされた部屋の中。
あたしの上にはエドの影が覆いかぶさってくる。

「……いいだろ、別に」
エドはベッド脇の明かりにちらりと目をやる。


「だって」
あたしは少し頬を膨らませる振りをする。

「恥ずかしいよ……」

シーツにあたしを押しつけて上から見下ろしてくる彼は、
軽く息をひとつつくと、
一旦は明かりのスイッチに手を伸ばす仕草を見せたが、
それは一瞬だけだった。

「……遠い」
そう呟きながら、思いなおしたようにあたしの服を脱がそうとする。
首元に唇を寄せようと顔を近づけてきた彼に、
あたしは悪戯半分、小さく言ってみせる。
「……届かないんだ、手」
小さいから?なんて言う前に彼はむっとした表情であたしを睨みつけてくる。
「お前な。そーいうこと言うとな……」
エドは怒っているような表情を見せるけれども
本気ではないことはお互いにわかっている。

「言うと何?
なぁにするっていうのよ?」

豆のくせに、と冗談めかして言ってみせると、

「誰が豆だって!?」

まるでお決まりの儀式ように反応してくる。
眉をつりあげてねめつけてくるエドが愛しくて、あたしは思い切り抱きつく。
「おわっ」と彼が声をあげて、ベッドが軽く揺れた。
抱きついたあたしを潰さないように、
エドはシーツの上についた両腕を腕立て伏せするように踏ん張る。

両手をせいいっぱい伸ばしてしがみつくけれども、
あたしはエドをすっぽり抱くことはできない。
体はどこもかしこも硬くて強張っていて、
それなのに怖いくらいに熱い。
シャツの上からでもよく分かる。

まわした腕は、
エドの背中半ばまでしか届かない。
身体をもっと密着させれば、違ってくるのかもしれないけれど。
なのに、エドはあたしを、くるむように抱くことが出来るみたい。
腕立て伏せしていた両手を、おもむろにエドはあたしの背中の下に差し入れる。
エドの肩口に顎を寄せて、されるがままに抱かれてみる。
抱いたはずなのにいつの間にか抱かれていて、その逆転がホントはちょっと悔しい。

ほんのちょっとだけエドとそうして抱き合って、
おもむろに体を離される。
熱が逃げていくのがちょっぴり寂しくて、
あたしはエドの体にきゅっとしがみつく。

「ウィンリィ」

ぽつんと落ちる、低い声。

体をわずかに離したエドが、あたしの顔を覗き込むように軽く顔を傾ける。
名前を呼ぶ声が低くて静かで
あたしはちょっぴり緊張する。
緊張しながら、ゆっくりと顔をあげる。

あたしの冗談に子供っぽく反応したエドはもうそこにはいない。

……ああずるい。

エドの表情はちょっと気難しそうな、不機嫌そうな顔になっている。
けれど、決して不機嫌なわけではないというのは目を見れば分かる。
金色の眼差しはひどく物静かで、精悍で、真摯で。

……ずるいよ。

ちょっと怒りっぽくて、
普段はくるくる忙しく表情を変えるくせに。

キスをしようとするその瞬間、
エドの顔はまるでスイッチを切り替えるように
見たことないような真面目な顔になってしまう。


あたしが瞳をゆっくりと閉じれば、
それに手繰られるように、空気がぬるく動く。
ちゅっとキスをされて、
呼吸を分け合う。
足りない空気を補うように、
唇を食んで、共有する。



「…………エド」


軽く顔を離して、あたしは小さく名を呼ぶ。
エドの顔を見ながら。

エドは返事をしない。



「エド。………顔、赤い」


途端に、彼は口をむっと曲げた。


「お前が赤いからだろ」

…つられたんだ、バカ!

そういわれて、あたしもむっとする。

「人のせいにしないでよ!」


確かに、頬が熱い。
自分で確認は出来ないけれど、彼の言うとおりなのだろう。
けれど、赤いのはアンタのせいなのに。
あたしのせいにするなんて、本当に、ずるい。

あたしの反論に、エドもまけじと返す。

「いちいち赤くなるんじゃねぇよ!やりにくいだろ!」
「あんたのせいじゃない!」
「なんでオレのせいなんだよ!」

……ああまただ。

二人だけの部屋。
ベッドの上に押し倒されていて、
逃げられないほどの至近距離にいて、
言いたいことはそういうことじゃないのに、口は言うことをきかない。
それなのに、身体は、心は、素直で、嫌になる。

次は何を言う?何を言えばいい?
こんな不毛な言い合いを、続けたくないけれど、
緊張しながら、あたしは言葉を探している。

あたしのそんな思考をよそに、
少し黙れよ、とばかりに、エドはあたしの顎を
半ば強引に捉えてきた。

まただ。
スイッチが切り替わるその瞬間を、あたしは見ている。
瞳を閉じるその瞬間、あたしの脳裏にエドの顔が焼きついて離れない。

笑っているわけでも、怒っているわけでも、泣いているわけでもない。
思いつく限りの感情の名前がついたピースをあてはめようとしても、うまくはまってくれない。
名前をつけるのが難しい、生真面目なその顔が近づいてくる。

何を考えて、何を感じてる?
あたしと同じこと、考えてくれてる?

訊いてみたいけれど、
明かりのあるこの部屋で、エドに見られているのをまざまざと感じながら訊く勇気が
今はまだない。
今更だ。
だけれど言葉が欲しいといったら、この生真面目な顔の男はどんな顔を見せるだろう。

啄ばむように唇を軽く何度も重ねながら、
エドはあたしの服に手をかける。
服の上から両胸に両手を置く。
エドの左手だけがゆっくりと動いて、解きほぐすように布地の上から撫でられる。
さわられているだけで、息が上がってくる。
それを悟られるのが恥ずかしくて、
あたしはゆっくりと、呼吸する。
エドの手が、裾から布地のしたへと侵入してくる。
生身の手が、やわやわとあたしの胸を揉んでいる。

努めてゆっくりと息を吐いていたのに、
あたしの呼吸はどんどん速く、浅くなっていく。
薄く目を開くと、あたしの胸の辺りがもぞもぞと動いている。
布地のしたで、エドが何をしているかが分かる。
指の腹で、胸の頂をゆるゆるとこすられて、
あたしはお腹のあたりがきゅんと震えてくる。
エドがあたしの顔を覗き込むような仕草をしてくるので、
恥ずかしくて思わず顔を背けてしまう。

「脱がすぞ」

断りを入れているつもりらしい。
あたしは何も言わない。エドも待つ気はない。
シャツをたくしあげられて、
橙色の明かりのしたに、あたしは曝け出されてしまう。


「……電気、消してってば」
「…いやだ」

エドはきこうとしない。
曝け出したあたしの胸におもむろに口付けてくる。
ぬるりと這う彼の舌の感覚にぞくりとする。
舐められたところが冷たくて、熱い。

「ねぇエド……待って。待って」

動きを阻むように、あたしは彼の頭を押しとどめるように強く抱く。

「なんだよ」

エドは面倒臭そうな声を出しながら
胸にうずめていた顔をあげる。
あたしは彼を軽く睨んだ。

「……エドばっかり、ずるい」

エドはまだシャツ一枚だって脱いでいない。
それに対して、あたしは。

「あんたばっかり見て、ずるい」

……見られるの、恥ずかしいんだから。

あたしはエドの体をおしのけて
電気を消そうと上体を起こそうとする。
ベッド脇の棚に置かれたランプは煌煌と部屋を橙に照らしていて、
あたしとエドの影を切り取ったようにシーツの上に浮かび上がらせている。

身体を半分起こしてスイッチに手を伸ばそうとしたあたしを、
エドが無理矢理押し戻す。

「あ」

視界が重く揺れて、ベッドがぎしぎし小さく悲鳴をあげた。
シーツに深く沈められて、
揺れる視界の真ん中にエドがいる。

見上げたエドは少しばかり意地悪な笑みを口端にたたえていた。

「……んじゃ、お前も見ればいいだろ?」

エドはそう言って、おもむろにシャツを脱ぎ始める。

「電気消したら、見れないぜ?」

そう言いながら、にやりと笑みを浮かべたまま
裸になった上半身をあたしの肌に合わせるようにして抱きついてくる。
あたしの身体にさらに熱が昇った。


「そんな意味じゃなくて……!……あ……」

エドの左手がするりとあたしの下腹部を這う。


「お前も見れないし、オレも見れないし」
電気は消せねぇよ、と彼はどこか笑みを含んだ声で低く言う。
言いながら、あたしの下着に手をかけようとする。
悪戯なその手は遠慮がない。
すでに熱がこもりはじめていたそこを、エドの指が這い始めるのを感じて、
あたしは体を縮こませる。
呼吸がどんどん速くなっていく。努めてゆっくり息をしようとしても駄目だった。
意識すればするほど、熱が加速してしまう。

指の動きをそのままに、
エドはちゅ、ちゅ、と跡をつけるように
あたしの胸に口付けて、舌で先端をちゅるりと舐めあげる。

「ん…ぁあ……」

我慢できなくて、声が小さく漏れてしまうのを聴いたのか、
エドはまた顔をあげて、やっぱり意地悪な笑みを浮かべる。
浅く呼吸を繰り返しながら、
あたしはそんな彼を睨む。
身体中に熱がこもっていて、発散したくて、どうにかなりそう。

「お前も見ろよ」
エドはそう言いながら、顔を寄せてくる。
エドが身動きするたびに小さくベッドが軋んで、
橙に照らされた部屋の中で、エドの影が覆いかぶさるようにあたしの視界をいっぱいにする。

「ん…んんッ……」

エドの左手が動いている。触ってくる。
下着の上から、恥ずかしいところを遠慮なく触ってくる。
どうしよう。
自分でも分かるから、エドにもバレているに違いない。
まだ布地の上から触られているからマシだ。
だけれど、その下は、たぶん、もうべとべとで。

逃げ出したくなるけれども、
視界いっぱいにエドがいる。
意地悪なエドは、あたしが彼の与える刺激に震えている様を
程近いところに顔を寄せて、まるで観察でもするかのように見ている。
どこか悪戯っぽい笑みさえ浮かべて。
余裕の表情に、腹が立つけれど、半分くらいは気持ちがよくて、そのジレンマにいやになってくる。

「すっげ、濡れてる」

……ばれた。
あたしは顔に熱が昇るのを力なく自覚するしかできなかった。

ああ、あたし、たぶん、今最低に情けない顔してる。

「………バカ」

負け惜しみのように、そういうしかなかった。

…あんたのせいじゃない。

エドは心底嬉しそうな表情で、にやりと笑んであたしを見ている。

上から覗き込んでくるようなエドの顔を正視できなくて
あたしは顔をそらす。
どこを向いても、エドがいるので、さらに泣きたくなってくる。
覆いかぶさってくるような格好で、でもあたしに体重はかけないように身体を離しているエドは
あたしを横から抱くようにして、手は足の間を執拗に触ってくる。
機械鎧の腕はあたしの頭のあたりにあって、さわさわと彼が髪をいじっているのが分かる。

「ウィンリィ」

不意に低い声が耳元で鳴って、
あたしは思わず顔をあげる。
エドの指先が直にあたしを触ってくる。
見えないけれど、頭の中で想像する。指の感触から、手繰るように映像を呼び寄せる。
すごく恥ずかしくて、気持ちよくてどうにかなりそうだった。

顔をあげれば、エドは今度は真面目な表情で
あ、キスされる、て分かる。

キスするときは、絶対に真面目な顔で、
そんな真剣な顔でねだられたら、あたしはもう拒絶できない。





「エドって、スイッチみたい」

「は?」


執拗に唇を舐めあって、
ようやく離したあとに、息も切れ切れ言ってやったら、
エドは心底、何のことか分からないという顔をした。
眉間に皺をひとつ立てて、何がだよ、と低い声が落ちてくる。

唇を離しても、エドは程近いところに顔をとどめたまま
ただ指の動きはとめずに、早めてくる。
あたしは息を切らしながら、エドをまた睨んだ。

ああどうしよう。気持ちよすぎて、涙が出てきそうになってくる。



スイッチみたいに、簡単に切ったりつけたり、切り替わりが激しくて、そして明瞭で。
ふざけてるのかと思えば、唐突に真面目になって。
あたしはそれに振り回されてばかりで。
いやっていえない。

だからエドはずるい。



そんなことをちょっぴり責める口調で言ってみたら、
エドはひどく心外だとばかりに眉をしかめた。
何言ってんだよと小さく呟く。


そんな涙目でそんなコト言われるとなぁ、と言葉を続けるエドの頬はちょっぴり赤かった。

「余計に、……電気のスイッチ切れねぇよ?」

「え」

……我慢デキマセン。
ぽつんとエドはそう言って、あたしの中を弄っていた指を引き抜く。

「……っ」

そんな彼の指の動きにあたしが声もなくひとつ震えていると、
エドがベルトを緩める音が耳に届いた。

それをきいて、余計に身体の熱があがって、
あたしは恥ずかしくて、でもホントは嬉しくて、
そう思ってしまうことがまたやっぱり恥ずかしい。

彼は口を一文字に結んだまま、どこかはにかんだように、しかし怒ったように、
あたしを見つめてくる。
顔を覗き込むようにして、唇を寄せてくる彼の顔は、やっぱり真剣だった。
キスするときだけに見せる、エドの顔。
スイッチの入った顔。


ベルトをゆるめながら、照れを隠すかのように
エドは怒った口調でぽつんと言った。


「オレのスイッチ押すのは、いつもお前だっての…」



(fin.)




2006.4.30

…すみません。酔っ払いながら書いたら妙なものが。
エドはちゅーするときに、
「これからするぞ!いいな!ほんとにいいな!どーなってもしらねぇぞ!」的な
暑苦しい?オーラ?みたいなの出すといい。とか思って…。
アルだったら、空気読みながらさらっとスタイリッシュ?にキスして、
えへへ〜と和み照れモードに入りそうな人なんですが(相手は誰か知りませんけど)、
エドは、そういうの下手くそそうだと思い…。

だからある意味非常に切り替えがへたくそで、
だけど、そういう(どういう?)モードになったら、
めりはりつきすぎな切り替えが出来る人なんじゃないのどうなの、
と思いながら、原稿中に妄想してました。
……ネタを書き起こしたのが深夜だったのがいかんかった。

エドウィンは不器用なエチィがいいそれがいい。
でも、攻めモード満点でこなれたエドも大好きですよ…。最近えろいですよね、あのひと。

そんなこんなでオフの原稿の反動がいちぢるしい小ネタです。



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