「責任とって?」





「痛・・・」
小さくウィンリィが呻く。

機械鎧の整備をしているウィンリィの隣で
本に目を通していたエドワードは、ん?と顔を上げる。
「どした?」
「…手、切っちゃった…。」
ウィンリィは人差し指を口の中に含む。
「見せてみろよ。」
「ん」
わずかに湿ったその右手の人差し指をウィンリィが差し出す。
「痛い?」
「ちょびっとだけ。」
ふーん、とうなずいて、エドワードはぱくりとその指を口の中へ含む。
「…な…」
思わず身をひこうとするウィンリィだが、エドワードは離さない。
逆にウィンリィの腰に手をかけ抱き寄せる。
座っていたエドワードの膝の上に腰掛けさせられたウィンリィの顔は真っ赤だ。
ちうっ、と音を立てながらエドワードは指を吸い、口から離す。
「痛い?」
見上げるように金色の瞳が聴いてきて、ウィンリィは何もいえなくなる。
指先が熱を帯びだす。ドクドクと血流が走り出して、痛い。
エドワードはもう一度、ちゅっと指先に口付けて、
「……気持ちよくしてやろっか?」
と聞いてくる。
「え…」
どきんとして、ウィンリィの青い瞳が揺れる。
それを見てとりながら、エドワードの手はウィンリィの身体へと伸ばされる。

「……っそれはっ、関係ないでしょっ…」
べちっと手を叩かれるエドワードはそれでもにやりと笑う。
「……今、迷ったくせに?」
茹で上がったタコのような顔をしたウィンリィに、今度は頭を殴られた。

「いってぇ…!何すんだよ!」
「バカなことばっか考えるからよ!ていうか、離しなさい!」
「やだね!」
エドワードはさらにウィンリィの身体を密着させるように引き寄せ、
彼女の顔をじっと見つめる。
追い詰められたようにウィンリィは息を呑んで、それからはぁ…っと息をついた。

……負けたわ。あんたには。

力を抜いて、エドワードの首に腕をまわす。
ついばむようにキスを求められて、何度も何度も口付けをかわすと、
顔を離したエドワードはぽつりと声を落とす。
「やべ…」
「ん……?」
「マジに…なっちゃった…」
「!?」
エドワードが指し示したところを見下ろしたウィンリィはぎょっと身体をこわばらせる。
「ちょ…何!…や、やだぁ…」
エドワードはにんまり笑って、ウィンリィを抱き上げて椅子から立ち上がる。
「…てなわけでぇ…」
続きをイタシますか!と笑って歩き出すエドワードに、ウィンリィは
おろしなさい!と もがく。
しかし、整備室のドアノブに手をかけながら、エドワードは
「責任とってくれますよねぇ?ウィンリィさん?」
とにやりと笑うだけ。

仕事が出来ないじゃない!というウィンリィの声を吸い込むように、
扉はパタンと後ろ手に閉められた。




(fin.)





2005.7.10
…拍手お礼小説から再録。2004年10月頃書いたもの。



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