「Position」



…イラスト集中扉マフィア〜な絵から勝手にアテレコ妄想会話文。
エドウィン薄。幼馴染+妄想では強気なエドの会話。




――Position






「ウィンリィが座るべきじゃない?」


そう言ったのはアルフォンスだった。
三人と一匹で写真を撮る、となったときの立ち位置を決めるのに、
もう数分ほど、時間を要してしまっている。
たかが位置、されど位置だ。


「んで、兄さんが右、ボクが左に立ってさ」
にこやかにアルは言葉を続ける。

「…で、デンはウィンリィの足元に座って」
いい案だ、と褒めるように、
ウィンリィの飼い犬は低く吼えてみせる。

しかし、渋面をつくったのはエドワードだった。

「しかしだな……」

なかなかいい顔をしない兄に、
なんだよ?とばかりにアルフォンスは小首をかしげる。

「オレがお前の横に立つってことはだな……その…」
なかなか次の言葉が出てこないエドワードを尻目に、
ウィンリィはすたすたと中央に据えられた椅子に向かう。
その後を、軽い足取りでデンが追った。

言いよどむエドワードなど関係ないとばかりに、
ウィンリィは椅子に座った。
「あ!おま…っ!ちょっと、待て!」

スラリと白い足を軽く組んで、
ウィンリィは背筋を伸ばしながら、得意そうに笑む。

「早く来なさいよ」

エドワードは言葉を失う。

「はい、エドは右ね。アルは左。
デンはここ」

そういいながら、彼女は愛犬に足元を示す。
渋々とエドワードはアルフォンスを伴って、
彼女に指さされた場所へと立つ。


「えへへ。両手に花だわ」
ウィンリィは肘掛に両腕を軽くついて、
両のてのひらを仰向けに返してみせる。

花ってなんだよ!なんか間違ってるだろそれ!とエドワードはむっとする。

「………すごい顔」
悪戯っぽく笑ってみせるウィンリィにやれやれ、と肩をすくめながら、
しかしアルフォンスは一方で兄のほうを横目に見やる。

「うるせぇな」
だいたいだ、とエドワードは面白くなさそうに、
前を座るウィンリィの頭をちらりと睨んだ。

「おまえ。足、組むな」
「何よ」

エドワードはますます仏頂面になる。
(……あのな!前!見えたらどーすんだよ!)

エドワードは彼女を上から見下ろして、内心落ち着かない。
黒いレースのフリルがあしらわれた裾から
露になる白い足にうろうろと視線を彷徨わせるが
目のやりどころに困る。

しかし、そんなエドワードの内心の詰問など何処吹く風で
ぽかんとした表情を浮かべたウィンリィは
後ろ向きに伸びをするように、体の上体だけを
背後のエドワードに向ける。
げ、とエドワードの顔がマズイモノでも飲んでしまったように
硬直する。

「何怒ってるのよ?」

ウィンリィが眉をしかめる。
蜂蜜色の髪が白い肩をすべり落ちた。

上体を弓なりに反らすような格好で、
落ち着きを失っている背後のエドワードを軽く睨みあげる。
黒い絹一枚のみに覆われた彼女の肢体の曲線のあちこち…
たとえば、鞠のように丸みを帯びて上向いている胸だとか、
金糸のような彼女の髪がすべる丸くて白い肩だとか、
やっぱり組むのを止めようとしない白い足だとか、
妙に細い気がするウエストだとか、
そんなものがいちいち視界の真下で無防備さを露に、
やたらと強調されるようにエドワードの目には映ってしまい、
泡を喰ったように落ち着きを失う。

「……前向け」
「あ」
エドワードは思わず彼女の頭に両手を伸ばす。
無理矢理彼女が向いている方向を正面へと軌道修正させようとすると
痛い、とウィンリィは口を尖らせた。

やれやれとまた肩をすくめたのはアルフォンスだった。
兄の動揺をいちはやく察知した彼は、
しょうがないなぁとばかりにウィンリィをのぞきこんだ。

「兄さんね、ちょっと気になってるんだと思うんだ」
「何が?」

アルフォンスの言葉に尋ね返した声は二人分だ。

「エドが何を?」
「オレが何を?」

アルフォンスは兄のほうは顧みずに、
どこか内緒話でもするように、しかし、ばっちり兄には聞こえるように
ウィンリィにささやく。

「ほら。ボクと並んで立つとさ。……し…ちょう……がね…」
最後の部分はさすがに声を落とす。
しかし、こういうことに関してだけは耳の聡いエドワードは
ぎりと弟を睨みつけた。

「おい、いまなんて……」
「なぁんだ」

エドワードの言葉を打ち消すように
ウィンリィの声が割って入る。

ウィンリィはちらりと首のみをエドワードに向けて、
しょうがないわねぇとでも言いたげに肩をすくめた。

「あんたねぇ、まだ気にしてんの?……身長」
いつまでも気にすることなんかないのにねぇ、
とさらりとウィンリィは言う。

「おま…ッ!!」
……お前がそれを言うか!?
とエドワードは、口をぱくぱくさせたが、ウィンリィは我関せずだ。

さぁおとなしくしようねー、などと
足元に座ったデンの首に巻いたリボンを整えたりなどしている。

エドワードは非常に不満だった。
自分は忘れていない。この幼馴染に何を言われたか。
いや、忘れかけていたけど、記憶から抹殺したかったのに
おせっかいにも思い出させてくれたのは当の彼女じゃないか。

「……なんで笑う…。アル」
「…………え? あ、いや、べ、別に」
と言いながらも、弟は笑いを堪えるのに必死な様子だ。
口元を抑えながら、くつくつとスーツの肩を揺らせている。

「場所変えて、兄さん真ん中にしたら」
「いいわよ」

今度はあっさりと、ウィンリィは頷いた。
そして、すっと白い右腕を前に出す。

「エド」
やれやれとエドワードはやっと解放されるとでも言いたげに
ウィンリィの前に立った。

「ったく。お前らバカにして楽しんでるだろ!」
ウィンリィの右手をエスコートするようにとって、立たせる。
弟とウィンリィの二人が組したら勝ち目はまずない。

椅子からウィンリィが立つと、合わせるように足元のデンも四本肢で立つ。
ウィンリィの目線の真正面にはエドの目は無い。
ちょっと見上げなければ、彼の顔を見ることは難しかった。
軽く見下ろしてくる彼の眼差しがひどく近すぎて、
ウィンリィは思わず目をそらした。
こうして立ってみると、昔とはぜんぜん違う。


「……ほら。襟、曲がってるわよ」
そういいながら、ウィンリィはエドワードの襟元に手を伸ばして整える。
若干顎をそらせながら、エドワードはそれを素直に受けた。

まったく、とウィンリィは先ほどエドワードが居た位置に
入れ替わるように立つと、椅子に腰を下ろした幼馴染を
何かをごまかすかのように、からかった。

「しっかりしてよね、『お兄さん』」
「……お前の兄貴になった記憶はねぇぞ」
正面を向いたまま、エドワードの不服そうな声が返ってくる。
あーじゃ、あれだ、と付け足すようにアルフォンスが軽い調子で言った。

「しっかりしてよね、『旦那さん』?」
ぶっとエドワードはむせる。
けらけらと笑うのはウィンリィのほうだった。
「……お前とケッコンした記憶もねぇぞ、アル…」

エドワードの後ろで、
アルフォンスとウィンリィはきょとんと顔を見合わせた。
二人して指を差し合って、
「あ、じゃ、逆だ」

そういって、二人してからからと笑い、
エドワードはぶすっと口をへの字に曲げて無言に徹することに決める。
そうだ、弟とウィンリィの二人が組したら自分に勝ち目はまずないのだ。

いざ撮るとなっても、エドワードの仏頂面はなおらない。
「ちょっとは笑いなさいよ」
見えてないはずなのに、後ろからウィンリィに言われた。
「なんで分かるんだよ」
「分かるわよ」
…後姿がすねている。
ウィンリィはわずかに目を細めて、どこかはにかむように
彼の後頭部を見つめた。表情は見えないけれど、なんとなく分かる。

「ほら、兄さん、笑って、だって」
アルフォンスに促されて、
面倒くさそうにエドワードは正面を向き直る。

…笑って。笑って。笑えるほど楽しいことを思い出せ。
ハタと思いついて、エドワードは口を開く。
真正面に顔を向けたままだ。

「おい、ウィンリィ」
足元にデンを従えたウィンリィは、
なによ、と口だけでエドワードに応える。
エドワードは正面を向いたまま、低く言った。


「……お前、あとで、覚えてろよ」


はぁ?と首をかしげつつも、
ウィンリィはそれ以上言及しない。
構えられたカメラに顔を向けるのが
まず今一番にやらなければいけないことだったからだ。

しかしエドワードは全く別のことを考えていた。

…さっきはそんなカッコで無防備に挑発して。

ウィンリィは悪くないのだが、
エドワードには関係なかった。
『あたしより背の低い男はいや』
そう言ったのはこいつだ。

今は少なくともこいつよりは大きい。
遠慮は要らない。
立ち位置ってやつを、教えてやる。


ようやく定位置を決めた三人プラス一匹に、
撮りますよーとカメラが哂う。

さてまずどうしてやろう。
キスして脱がして舐めてしゃぶって。
じんわりと頭をもたげた計画に、
エドワードは、自然と笑みをこぼす。
そう、遠慮は要らない。
今は少なくとも、こいつより大きいんだから。
今の立ち位置を教えてやる。


不埒な考えにひたりながら、
にっと口元に笑みを切り結ぶと、
そんな彼の意中など全く映すこともなく
パチリとひとつフラッシュがたかれた。



――Position




(fin.)





2006.3.26

やまもおちもいみもない…。
最近のオフ本の反動なのかこんな短い小ネタばかりをへらへら妄想中。
あのウィンリィを剥ぎたいとか妄想したら、エドが許可するだろうかいや無理そうと思っていたら出てきた脳内アテレコ会話。色々おかしいとこありますが…。

この三人の中ではアル様(様付けか!)が一番最強だと思います。何もかも知ってて、兄さえも手玉にとりつつ何もしらなーいて顔してさわやかに笑ってそうだ。それにウィンリィが加わったらエドは逆らえなさそう。だけど真ん中に座るエドはやっぱ王様だと思う。肝心なときには一番の力関係を発揮しそう…だけど普段はダメダメでいいです。

そんな幼馴染三人+犬、プラス、妄想の中では強気なエド→ウィン。喰われる妄想もやりたいな。(どういう意味)いずれ。



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