「見てみろよ」






間が抜けるような快晴に、彼女はうんとご機嫌だ。
「こんな日はお弁当を持って出掛けるのが一番よねっ」
とか何とか言って、手元にはすでに、バスケットが広げられていたりする。
「………オレは、まだ読みたい本があったのに。」
彼女の横に腰掛けながら、不満をぶつけてみる。
ホントは、全然、そうじゃない。
嬉しいけれど、何かへらず口を叩かないと、ドキドキしすぎて間がもたない。
「毎日毎日本ばかり読み漁って!そのうち部屋から出なくなるんじゃないかって心配なの!」
「……へーへー。どうせ、オレは錬金オタク、って言いたいんだろ。」
「あら、判ってるじゃない」
「…っ!!うるせー!この機械オタッ」
「うるさいわよっ!豆粒チビ!」
「な……っ」

言い返そうとして、やめた。
彼女がオレに向かって笑いかけている。
その笑顔が、とても晴れやかで。
何を言おうとしたのか、忘れてしまった。

「ウィンリィ……。」
「ん?」
「見てみろよ。」
「え?」
「空。真っ青だ。」
バスケットの中身を広げることに専念していた彼女は、
オレの声に顔を上げる。
そこを狙って。

ふわっと唇が触れて。
痺れにも似た、その甘い味。
「な……っ!」
一気に彼女の顔が赤く染まる。
それが、とても可愛いい。



だけど、その直後、今度はオレの顔が赤くはれ上がったけれど。


(fin.)





2005.7.10
…拍手内お礼小説から再録。2004年10月頃書いたもの…?




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