エドワード・エルリックの実況にてお送りします in バスルーム



【R15】それとなくそんな描写有りつつ。
81話読後に書いたものですので、ネタバレがあるかもしれません。
ちょっとでもネタバレいやって方は回避して下さい。








エドワード・エルリックの実況にてお送りします
in バスルーム








ふかふかとわきたつ湯気の向こうに、
白く濡れた陶磁の肌がちらついていた。

すべらかに水を弾くその肌、その胸元。
殻を剥きあげたゆで玉子のように
つるりと丸みを帯びた肩先に、
濡れた金髪がしどけなく張り付いている。


……あー、まずい。
どこに目をやればいいのか、心底ワカリマセン。


波打つ白い斑紋の奥底へ
ゆらめき消えてしまう彼女の肢体のラインが少しだけ惜しく思い、
いやだがしかし、そのお湯の白さがなければ
今頃は余計に目のやり場に困っていたかもしれない、
などと思い直してみたりして、
オレはせわしく視線を水面に右往左往させていた。

乳白色のお湯の中に身を沈め、
狭いバスタブの中で向かい合って座っている相手は勿論、
弟でも親父でも、当然だが母親でもない!

「少し入れすぎちゃったかなぁ」


両のてのひらでお湯をすくいながら、
ものすごい勢いで入れていた入浴剤の量について
呑気にオレの目の前で思案しているのは、
紛れも無くウィンリィだ。
ちなみに言うまでもなく、お湯に沈めたその身体には
何も身に着けていない模様。

指の隙間からほたほたと音をたててこぼれるお湯を見つめた目が、
なんの前触れもなくひたりとオレを見る。

「……な、んだよ」
 
きゅるんとした青く丸い瞳が真正面から見つめてくる。
かすかに白靄かかった視界の真ん中にいるウィンリィが、
妙に綺麗に見えてドギマギした。

どうしてこんな状況になったんだ?って
今は聞くなよ。
オレが説明して欲しいくらいだ。

先ほどからずっと自覚せざるをえないことは
身体に奇妙な熱が昇っていて、それにくらくらしていることだ。
心臓の音が耳の裏から聞こえるのは
単純にお湯にのぼせているからでは、勿論ない。

お湯をすくったウィンリィは楽しげにオレに言った。

「なんか、牛乳風呂みたい」

げ!
よりによって牛乳だ?
おまえ、それ、今言うことか?

オレが盛大にしかめっ面を作る前に、
ピシュッと水がしぶく音がひとつして、
オレの目の前は白く濡れる。

「うぉわッ!?」

悲鳴をあげるよりも先に
折り重なるようにして浴室に響くのは
ウィンリィの笑い声だ。

「なにしやがる!」

顔を腕でこすって、
かすんだ視界が元に戻るのを待てば、
ケラケラと笑うウィンリィがいる。
両手の指を組んで半分お湯につけた彼女は
心底楽しげに笑みをはじけさせた。

「水鉄砲、狙い、外しちゃった」

オレの顔に盛大にぶっかけといて
その言い草はなんなんだ?

彼女の視線の先を倣うように追うと、
湯船の中にプカプカと揺れるアヒルの玩具がひとつ。
なんだこれ、とつまみあげようとすると、
触らないでよ、とウィンリィが咎める。

「ひよこ豆のほうに当てようと思ったのに、
別の豆に当たっちゃった」

ひよこ豆とはこの玩具のことらしい。

悪戯っぽく唇を尖らせてそう言うと、
ウィンリィは組んだ指先をうまく絞りながら
お湯を飛ばす。

…って、聞き流しかけたが、
別の豆ってなんだよ!
と頭にくるが、いつもの調子で言い返せない。

湯気蒸せるバスルームに、
タプタプと浴槽を叩く水の音が響き渡る。
彼女が身動きするたびにゆれる水面に顎先まで浸かりながら
アヒルと遊んでいる彼女の指先をじいっとにらんだ。

まるでオレなど眼中にない、とでも言いたげに
アヒルの玩具と戯れている彼女を見ていると、
余計なことが頭を占めそうになっている自分が
とてつもなく滑稽に思えて、
オレは無意識に頭の中で唱えている。

すいへいりーべぼくのふね…――。



だがしかし、
オレの努力を邪魔したいのかなんなのか、
ウィンリィの水鉄砲がまたしても襲ってくる。

ごめ〜ん、じゃねーよ!

オレはキリっと彼女をひとにらみしてから
ウィンリィに同じ方法でやり返す。…はずだったのだが。
あれ、おかしいぜ。

「エドの下手くそ〜」

得意げな彼女の顔がいまいましい。
なにが下手くそだ、余計なお世話だよ!
だがしかし。
右手と左手を組んで、彼女がするように水を飛ばそうとするが、
なぜか飛ばない。

「そうじゃなくて!
親指と小指をこう、ぴったりとくっつけてね」
「……」

どうやら彼女は水鉄砲をうまく飛ばすための指南役を
勝手に買って出たようだ。
誰も頼んでないぞ。

お湯から完全に腕を出した彼女は、
手の組み方をオレの目の前で作ってみせる。
ザバっと浴槽のお湯が大きく波打った。
こうするのよ、と手振りで教えながら身を乗り出す彼女の、
オレはまぁ、なんだ、胸元に目がいってしまうわけで……。
しょうがない、これは自然現象だ、男の摂理だ、悲しい性だ。

まあるいふくらみが二つ、
白い丘を作ってお湯の中から三分の一ほど顔を出す。
一体全体何を食ったらこういうとこが膨らむんだろうなぁ、女って。

「ちょっと!ちゃんと見てる!?」

おっと。
オレは慌てて顔を見上げた。

「はい、ナンデスカ」

頬を上気させた彼女が、手を組んだまま
軽く眉を吊り上げる。

「ナンデスカ、じゃないわよ!
今言った通りにやったら出来るから」

自信満々にそう言い渡されてしまったが、
すまないなウィンリィ、……聞いてなかった。

いつもどこから出てくるか分からないスパナを恐れて
とりあえず心の中で詫びをいれつつ
テキトーに手を組んでやってみせるが、出来ない。
ちまっとした放物線をブサイクに描いて、
オレの水鉄砲、残念不発。

「ちがーう!そうじゃなくて!
もっとこう、手のひらも、こう、ぴったりくっつけるのよ!
で、水の出口を…」

身をさらに乗り出した彼女の胸元、
できあがった丘はさらにふくらみをまして
三分の二ほどか?
頂点まであと少し…などと
余所見してたてた目算ひとつは心の中にこっそり仕舞い、
今は彼女の指南通りに手を組んでみせるが、
そもそも、機械鎧の右手と生身の左手の組み合わせでは
どうも難しい。
それでも元素周期表を唱えるよりは
よっぽど気を散らすのには都合よい。

「指と指の組み方がわけわかんねーよ」

不満を漏らしてみると、
だーかーらー!と声をあげながら
彼女はお節介にもオレの手を握り締めてきやがる。

げ。まじ、困る。触るな。やばい。

鏡を見なくても分かるぞ、
オレ、今、たぶんすげー顔をしている。
そうだな、出来損ないの福笑いのような顔とでもいうべきか。

触れてくる指はどきりとするほど細長い。
指先の短く切られた爪の内側までが
白く透き通っている。

ちょっと湯に浸かりすぎじゃねぇ?

そう思った瞬間に、急に寒気を覚えて
オレは思わずウィンリィの顔を見つめた。
バスタブを浸したお湯からはもわもわと湯気が立っていて、
そのお湯に身体いっぱい浸かっているはずなのに
なんだか水が冷たい。
ぬるみを帯びた液体に包まれながら、
しかし、彼女が触れてくる指先から
違う熱がほっこりと伝導する。
お湯よりも、自分と彼女の身体のほうが熱いのだ。
そして、彼女よりも自分の熱のほうが高い。

「えーと、こことここをこう組んで…」

自信満々だった彼女の顔からみるみる勢いが削げていく。
あーわかるぞ、
右と左、反対側から見るとワケわかんなくなるんだよなぁ、
なんて思いながら、
オレは彼女の手首をおもむろにぎゅっと握り締めた。

「エド…!?」
「ちょっと、こっち、こい」

バスタブに浸したお湯の海が大きく波打つ。
驚きを隠さずに、ぎょっと目を丸くした彼女の頬に
ほんのり赤みがさしたのを視界の端に捉えつつ、
あ〜やべぇ、たぶん、もう元素記号も水鉄砲も効き目はないな、
などと妙に自覚している自分に正直笑えてくるぞ。笑うしかないぞ。

ウィンリィの身体を後ろ向きにさせながら
ぐいと力強く引き寄せると、
背中から抱きしめる。

「ちょ…ッ、エド…」

慌てたような彼女の声が風呂場に反響している。
さすがに動揺しているご様子。
腕の中で身をよじる彼女をきちんと前に向かせてから、
ほれ、とオレは両手を彼女の前にかざしてみせた。

「こっちのがわかりやすいぜ」
「そう、だけど……」
「それに、…なんか、寒くね?」
「……うん」

さっきまでの勢いはどこへやら、
ウィンリィの声はみるみる小さく消えた。
もぞもぞと居心地悪そうに身体を動かす。
狭い浴槽の淵を、タプタプと白いお湯が波打った。

「………エド」
「あ?」
「……」

幾拍かの沈黙のあと、
俯き加減だったウィンリィが震える声で言葉を漏らした。

「……あたってる」

枝垂れたハニィブロンドと背中の白さが眩しい。
なにが、と彼女は言わなかった。
後ろから抱きしめた彼女が耳の裏まで赤くしているのをみてとめて、
ああ、まずい、まずいよなぁやっぱり、と
まるで誰かに謝る勢いで繰り返している己を自覚しながら、
オレはひとこと、そーだな、とうなずいた。

「そーだな、じゃないわよ!」
硬直しているのは腕の中の彼女もだ。
怒ったように声をあげつつも、ウィンリィはこちらを見ようとしない



「じゃ、なんて言えばいいんだ」
「そ、れは…」

言いよどむ彼女の言葉をききながら、
後ろから抱きすくめた彼女の耳にピアスがないことに気づく。
まるで誘われるように、
オレは彼女の耳元に唇を寄せた。

「あ…っ」

ぴくんと跳ねるのは彼女の身体だ。
濡れそぼった髪を耳の後ろにかけてやりながら、
ついでに唇を押し当てる。
耳を食みながら、ふと見た先に、
ぷかぷかと浮いているアヒルの玩具が見えた。

「…教えてくれねぇの?水鉄砲」
「だ……」

彼女の声は途中で息を呑んだように途切れる。
耳から首筋にかけて唇を這わせながら、
オレの手はまるで別の生き物のようにお湯のしたでうごめく。
とろりとまとわりつく白湯の中で
さっきからちらちらとオレを誘惑していた膨らみを
てのひらで包んだ。

「教えてくれないなら……」

なんていいつつ、実のところ理由なんてどうでもいい。
だってしょうがないだろ、
自然の摂理、そして誤魔化せない感情。
折り合いつける前に答えが出ちまってるんだ。

湯にさらされ続けた肌は一瞬だけ硬い張りを覚えたけれども
すぐに包むような柔らかさが指先を圧倒する。

「や……」

ちゃぷ、ちゃぷ、と水音が淀み、
その上にウィンリィの吐息めいた声が折り重なる。
前かがみになる彼女の身体を逃がさないようにしっかり抱きとめて、
オレは左手で彼女の膨らみを包み、
右手はというと、乳白色のお湯のさらなる深遠へとうずめていく。

「エド…っ…待って…」

腕の中で慌てふためいたようにもがくウィンリィは、
背後から抱きすくめているオレの顔を見ようと首を振る。
濡れたハニィブロンドを乱しながら振り向いてきた彼女の唇に
すかさずオレはキスをした。

「…ッんぅ…」

桜色の花びらを散らしたように彼女が頬を赤くしているのは
もちろん、湯にのぼせているだけではないだろう。
きゅうっと目を瞑ってオレのキスを受け止める彼女を、
オレはというと目をあけて観察してみる。

交わす呼吸はゆるゆると荒くせわしくなりながら、
蓋をするように合わせた唇を擦り合わせ
ゆっくりとこじあける。
その間、オレの手は彼女の白い肌の上に見えない軌跡を描きながら
彼女の下腹部の、さらにその下へとご到着。

焦らすようにゆるゆると舌を差し入れながら、
水面下では彼女の下肢の間に指を差し入れる。

「んっ…ん……ッ」

だめ、と言いたげに、目を閉じたままのウィンリィが
ふるふると首を横に振ろうとする。
しかし邪魔はされたくない。
胸を弄っていた左手をおもむろに彼女の左頬へ添えれば、
逃れようと首を振るそぶりをみせていた彼女は
はふ、はふ、と呼吸を乱しながら
オレの唇の言いなりになるしかない。

オレをおしのけようと水の中でもがいていた腕から力が抜けていく。
濡れた唇を貪り合いながら、
彼女の下肢の間にすべりこませた指先を動かす。

「………ウィンリィ」

唇を押し当てあいながら、
オレは低く囁く。

返事をするように、
硬く閉じていた瞼の下から、
潤みを帯びた青色の瞳が切なげに生まれ落ちる。

「足、ひらいて?」

花びらを散らした彼女の頬がさらに紅潮する。
濡れて張り付いた金髪を手のひらに絡ませながら、
オレは彼女の頬を何度もさすりながら、もう一度囁く。

「ほら、はやく」

何か言いたげに一瞬だけ歪んだ空色は、
しかしすぐに、負けたわと言いたげに力を失う。
それを見てとって、オレは笑い出したくなるのをなんとか堪えている


彼女が何かを言う前に、蓋をするのが一番。

オレは顔の角度をかるく変えて
下からすくいあげるようにウィンリィの唇を吸う。
彼女の下肢から力が抜けていくのをいいことに、
侵入させた指先で、形をなぞるようにそこを撫でる。


「っ…ァ…」

ちゃぷん、と水がはねて、
同じくウィンリィの身体が白い魚のように敏感にはねる。

反応が違う場所がひとつ。

この辺か、と算段をつけて
その敏感な部位を指の頭先で押しつぶすように優しく撫でると
途端にウィンリィの息は段違いにあがる。
腕に抱きとめてキスをしながら、指で弄り回せば
キスの合間に漏れてくるのは熱っぽい喘ぎだった。

「や……ァ……こ、んなと、こで……」

ちゃぷ、ちゃぷとオレの腕先の動きに合わせるように
乳白色の水面は斑紋を描き、
ウィンリィの吐息まじりの喘ぎは
やたら浴室に反響する。

今にも泣き出しそうな顔を真っ赤にさせながら
許しを請うようにオレをみつめてくる青い空色の瞳に、
オレは囁く。

「水ん中でもわかるぜ。……すげーべとべと。おまえの、ここ」

なにがなんていわなくても分かるのだろう、
ばか、とウィンリィは眉根を寄せてオレをにらんだが
彼女が出来るのはそれだけだ。
ちゅぷ、じゅぷ、と沫立てるように
水の中で彼女の敏感な部分をさすりあげ、
指の動きをどんどん早めていく。

「あ…っ…あ…ッ……あ…ァん」

キスに疲れたのか、
ウィンリィはオレの顔の横に首を預けて喘ぎだす。
耳の真横で吐息まじりに喘がれたら、
そりゃあおまえ、我慢できるわけがないだろ?

「どっちがいい?」

指の動きをどんどん早めながら
オレは低くたずねた。

「指と……?」

もちろんオレの答えは決まっているのだが。

しどけなく身体をオレに預けた彼女が、
快感に蕩けた目でにらんでくるのが
またたまらないわけだが、
我慢もそろそろ限界なので黙って彼女の言葉を待つ。


ぽそりと彼女は囁いた。
「……エド」

オレご指名。
で?

「…の」

…のってナンデスカ。

しかしだ、これ以上いえるわけないじゃないと
青い瞳が半泣き半ギレで訴えてくるので
今日はこの辺で勘弁。
へたすると、
焦らしているつもりが
実は焦らされている、
なんてことになりかねないからな。

ちゅ、と軽く唇をあわせて、
オレは彼女の身体を軽くもちあげる。
水の浮力のせいか、彼女の身体はいつもより軽い。
浴槽の床に膝たちする彼女を
「オレの」の上に座らせようとする。
が、後ろからだとどうもわかりにくい。
彼女の中に埋め込もうとした矢先、
つるっとすべったオレのはうっかり狙いを外してしまう。

「…あ…ッ」

ヤダ、とウィンリィの表情が恍惚に歪むのが分かる。
彼女の敏感な部分をこすってしまったらしい、
それがわかって、なおも焦らしたくなるが、
さすがにそろそろ我慢も限界。
わりぃ、と彼女の耳の横で謝ると
蕩けた瞳がきゅるりとオレを捕らえる。
はぁはぁはぁと息を乱しながら、
きれぎれに彼女は囁いた。

「…下手…くそ……」

おおっと、おまえはまだ言うか。また言うか。
しかし先ほどとはうってかわって、
荒くした息を短く喘ぐ彼女は
ぞくっとするほどに綺麗だった。

「悪かったな、下手くそで」

へそを曲げた振りをして、オレは彼女を睨み返した。
だって、
そうしないと顔がにやけてしまうのが分かったからな。

ん、とひとつ息をつめて
彼女が腕の中で大きく震える。

「だから、教えろよ?」

おまえのイイとこ。


嬌声が漏れるよりも先に、
その甘やかな唇に蓋をして、
オレはゆっくりと彼女の中に埋め込んだ。



(おわり)





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2008.3.20


こ ん な エ ド い や だ 。

と思いつつも書いて、みた。なにこのエド誰これ。
きっとエドの夢ですよ…リハーサルしてんだよきっと。

「最高・です!」はきっとエドの台詞でもあるんだよと
思いつつ、エドの夢想炸裂とばかりに。
この続きはきっと100円入れないと見れないんだと思います。
(15巻参照)

すみませんすみません、なんだかノリがコピー本によく出てくる崩壊
したエドに。最近こんなアホなエドしか出てこないどうして。

風呂プレイならまず身体洗いっこじゃないかとも
思いましたが、
本誌でウィンリィの入浴シーンに出てたアヒルの玩具みてたら
この話がでてきたので、こっちを書いてみた。
むしろあのアヒルってエドなんじゃね?(なんでだ)

ちなみにどうしてこんな状況になったのか
書いた私も説明できません、ごめんウィンリィ。




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