「エド……なんのつもりかしら。」
「別に。」
「別に。じゃ、ないでしょ。」
オレはふわりと彼女の髪を肩に寄せて、首筋に唇を近づける。
機械鎧の整備中。
場所は整備室。
時はうららかな日の光が差し込む昼下がりの午後。
オレは彼女の身体を抱き寄せる。
後ろから抱き寄せられた彼女の顔は見えない。
けれど、耳はほんのり桃色になっている。
きっと、顔も赤いに違いない。
「離して。」
「嫌だ。」
「これじゃ、整備できない。」
「いいから……」
オレは彼女の耳元に唇を寄せる。
「このままで……。」
ふわりと風がそよいで、
さらりと彼女の髪が揺れる。
それに顔を埋めてみる。
不思議な匂いがする。
くらくらと眩暈を覚える。
「ウィンリィ…………」
オレは抱きしめる腕を強めて、
彼女の腰に回した手を上へともっていく。
そこは、とってもやわらかくて、お気に入りの場所。
彼女の身体、すべてお気に入りだけど。
「………っいい加減にしなさいッ!!」
「!?」
イタズラなオレの手を彼女がぐいっと掴み、
彼女の顔がくるりとこちらに向かう。
そして。
「……ン。」
唇にくれると思ったのに、彼女はくれない。
ちょっとだけそれたところにキスを落とす。
オレは不満げに鼻をならす。
「ケチ。」
「ケチで結構。今は整備!」
「………今、は?」
ウィンリィはスパナを取り出し、にっこり笑いながら
「『今』は、もれなくスパナ付き!」
はいはい、とオレは彼女の身体を離し、
腕を差し出す。
今は、ね…。
「んじゃ、後で、に期待する。」
「……えっ」
差し出されたオレの腕を取ろうとする彼女の腕を逆にぐいっと掴んで、
今度こそ唇をいただく。
…………もれなく、スパナが付いてきた。
(fin.)
2005.7.10
…拍手内のお礼小説でした。2004年10月頃書いたかと。