陰、踊る-2
月明かりの下で影が踊る。
目の前の鏡を見るのは耐えられない。
羞恥で身が焦げそうだった。
恥ずかしさで眩暈がする。
髪を振り乱して、顔を隠すように下を向けば、
群青色に照らされた床の上に、
切り抜いたような二人分の影が重なっている。
寝る準備をしていたウィンリィは、普段、よく着ている作業着ではなく、
一枚シャツに身を包んでいる。
柔らかな布地の感触を確かめるように、エドワードの手は布地の上を行き来する。
それを遮るようにウィンリィの手が邪魔したが、あまり効き目はない。
無言の攻防がしばらく続いた後に、静寂を破ったのはエドワードのほうだった。
「顔、……あげて。」
耳元でエドワードが低く囁く。
耳をくすぐるその感触にさえも、身体中が感じて震えが走る。
「ゃ……っ」
思わずこぼれそうになる声は、無理矢理奪われる。
顔にかかる髪を横に寄せられると、
目の前に広がった視界いっぱいに、自分とエドワードが映る鏡が目に入る。
鏡の中でまた、エドワードとウィンリィの視線がかみ合う。
その瞳に、何もかも見透かされていそうで、ウィンリィは恐くなる。
首をのけぞるようにして背後のエドワードからキスを受けていると、
ウィンリィの頬に添えられたエドワードの左手は
そろそろと彼女の白い首筋を指先でなぞり、
なだらかな曲線を描く彼女の胸に手を伸ばしていく。
「…っ…エドぉ……」
涙声になりながら、懇願する。
「ここはイヤ…」
しかし、エドワードは聞かない。
「いいから。………足、開いて。」
「あ」
いや…というウィンリィの声は音を作らず、ただ震えるように身体を硬くさせた。
いつの間にか、エドワードの手はウィンリィの下腹部のさらに下へと降りてきている。
「あ…ぅ…」
ウィンリィは逃れるように身を捩ったが、
エドワードに身体をがっしりと後から掴まれていてそれは叶わなかった。
エドワードの指は、ウィンリィの足と足の間に容赦なく侵入していく。
ウィンリィは足を閉じようとするが、エドワードはそれを阻む。
「エ…ド…」
エドワードの指の動きに全身を打ち震わせながら、ウィンリィは息を乱していく。
ついっと、エドワードの中指はショーツの上からウィンリィのそこを撫でると、
そのままショーツの内側へと指を差し入れる。
「……ヤらしー。」
ぽそっと呟くエドワードが言わんとしてることに気づいて、ウィンリィは顔に朱が昇るのを感じる。
「………馬鹿っ!…あんたのせい、でしょっ!」
しかし、エドワードは何も言わず、指をぐいっとねじ込む。
「や…ぁ…っ…!」
思わず漏れる声を、ウィンリィは慌てて飲み込む。
慌てて、エドワードの手を押さえていた自分の手で口を塞いだ。
差し込まれたエドワードの腕が上下するのが、白いシャツの裾の下に見え隠れする。
抱きかかえられるようにしてまわされたエドワードの鋼の右手は、
ウィンリィの胸を強く掴んで離さない。
そして肩越しにあるのは、自分をじっと見つめる彼の瞳。
全部、見られている。
全部、見られていることを、鏡を通してウィンリィはみてとる。
恥ずかしくて声が出ない。出せない。しかし、エドワードの指の動きは止まらない。
わずかに水音が響きだして、ウィンリィは一層顔を赤くさせた。
シャツの裾の内側は見えない。
しかしシャツの裾から見え隠れする彼の指、腕の動きは、全てウィンリィの目に映り、
ウィンリィをはずかしめた。
「んん…っ!!」
身体を背後のエドワードに預けるようにしながら、ウィンリィは顔を左右に振る。
くちりと音を立てさせながら、
エドワードは自分の指をウィンリィの中へと差し入れる。
くぐもった声を上げながらも、ウィンリィは、口を塞ぐのを止めない。
手の甲を噛むようにして、ウィンリィは必死に声を上げるのを耐えていた。
これ以上は、羞恥で、どうにかなりそうだった。
しかし、それを読み取ったのか、エドワードは容赦なく、ウィンリィのその手を取る。
機械鎧の指でウィンリィの指を絡め取るようにして、
鏡にその掌をつかせる。
逃さないとでも言わんばかりに、エドワードは指を絡めたまま機械鎧の手をウィンリィの手に重ねる。
「前、見て。」
「や……」
恥ずかしくて死にそうだ、とウィンリィは涙をにじませる。
「我慢しなくていーよ」
…もっと、聞かせて。声を。
エドワードは、ウィンリィの耳たぶを甘噛みしながら、
差し入れた指の動きを早めていく。
「あ……やぁ…っ……ダメ……ぇ…!!」
ウィンリィの声がどんどん艶を帯び、淫らになっていく。
身体をわずかにくねらせながら、ウィンリィはハニィブロンドを乱す。
揺れる金髪をふわふわと鼻先で感じながら、
エドワードはどんどん指の動きを激しくさせていく。
見れば、ウィンリィは、顔を真っ赤にさせながら、
月明かりの下、珊瑚色に光を弾く唇を薄く開けながら、ひたすら淫らな声を漏らす。
泣き喘ぎながら、我を忘れたように自分の指に酔うウィンリィに、
エドワードは嬉しくなると同時に、別の感情を覚えてくる。
……なんだか、面白くない。
「……ウィンリィ。…こっち、向いて?」
「え?」
荒い息をそのままに、ウィンリィは顔を向ける。
向いた唇をそのままエドワードは激しく食む。
「んン…っ…!」
身を引くウィンリィを逃さないように抱えながら、
ひたすらキスの応酬を繰り返し、ようやく唇を離す。
さっきから崩れそうになっているウィンリィの膝を立たせながら、
エドワードは自分を涙目で睨むウィンリィを面白そうに軽く笑いながら眺めた。
「きもち、い?」
顔を真っ赤にさせたウィンリィは応えない。
ふーん、とエドワードは軽く笑って、
差し入れた指をくいっと動かす。
空いた親指の腹で、彼女の敏感な嘴をくにっと撫で上げる。
「あっ…ン!」
痺れたように走る甘い快感に、ウィンリィは涙を散らす。
「…きもち、い?…オレの指。」
面白そうに薄く笑いながら、ウィンリィの耳の後ろをぺろりとエドワードは舐める。
「言って?……もっと、鳴いて?」
耳元で囁きながら、エドワードはぐちぐちとウィンリィの中をかき回す。
「……やぁ……っ!!」
鏡につかせたウィンリィの指先がきりりと音を立てた。
ウィンリィの爪がわずかに鏡の表面をひっかいたのだ。
「も……ダメぇ……っ!」
小刻みに打ち震えながら快感に酔うウィンリィの肢体を眺めながら、
エドワードは別の衝動を抑えられない。
バカみたいだ、と思ったが、止められなかった。
エドワードは唐突に、入れた指をくいっと引き抜く。
「……っあ…?」
鏡につかせたウィンリィの手をとり、
エドワードは彼女の身体をくるりとまわして、自分のほうへと向かせる。
涙にぬれた頬を、蒼い月の光が浮かび上がらせていた。
絶頂の余韻に酔うように空ろな瞳をめぐらせるウィンリィにエドワードは有無を言わさずにキスを落とす。
唇を離して、月明かりに光る銀の糸をそのままにして、
エドワードは鏡にウィンリィの身体をぴたりと押し付けた。
「エ…ド……?」
涙に濡れる瞳をまっすぐにエドワードに向けながら、
どうして?という風に切なそうな顔をウィンリィはする。
…あたし、何か、まずいことした?
「エド…あ、あたし……」
不安げに瞳をめぐらすウィンリィに対して、エドワードは、つい苦笑いを浮かべる。
「なんでも、ねぇよ。」
すいっと、エドワードはウィンリィの太ももの裏に手を滑らせる。
「指は、もう、終わり」
ウィンリィは、ぎくりと身を引く。
次はこっち、と 囁くように低く声を落として、
エドワードはウィンリィに口付ける。
「もっと、鳴いてな?」
唇が触れる瞬間に、エドワードはぽつりと呟いた。
……さっきよりも、もっともっと、オレを感じて?
まだ不安そうな表情を浮かべるウィンリィにキスを落とし、
それでも不安そうな彼女に、大丈夫だから、と囁いた。
…もっと、お前が鳴けば、問題ないから。
ウィンリィにキスを落としながら、エドワードは内心苦笑いを隠せない。
…だって、言えるわけがない。
泣き乱れるウィンリィを見て、自分の指にまで嫉妬しただなんて。
だから。
だから、彼女がこれからさっきよりももっと鳴けば、問題ない。
月明かりに照らされて、
床を踊る二つの影はまた溶けるように重なった。
(fin.)
2005.1.8
…なんだかぐだぐだです。キリが無いから終了(笑)。
なんでこんなに長々と…。ただ単純に、エドがどうでもよいことにも嫉妬してるとこを書きたかっただけですー。