サンプル5
そこは軍用施設だったが、佐官級以上の軍人が逗留できるように改装を施されており、寝食には不自由はしなさそうな部屋の造りだ。部屋に据えられたベッドに大の字になったエドワードは大袈裟に溜息をついた。
「あー……早くかえりてぇ」
ウィンリィはくすっと笑う。彼の旅癖は今に始まったことではない。一か所に長くとどまるのは彼の性分には合わないのだろう。
「なぁに? またどっか行くの? 今度はどこの国?」
ウィンリィの問いに、エドワードはむくりと上半身を起こす。ムスッと唇を引き結んだまま、「おまえ、ちょっと来い」と言わんばかりに手招きする。
「なによぉ?」
用があるんなら自分のほうから来なさいよね、なんて言いながら、それでも素直にウィンリィがエドワードのほうへ歩み寄ると、いきなり手を引かれる。
「え」
なに、と言う間もなかった。視界がぐるんと回転して、気が付いたら目の前にエドワードの顔がある。ふかふかのベッドの上に身体が思いっきり沈み、ウィンリィは思わず息を止める。ベッド上に押し倒されたことにようやく気付いた。
「おまえ、バカか?」
「!」
バカって何よ! と言い返そうとした瞬間だ。エドワードは少しだけ照れたように小さく言った。
「早くリゼンブールに帰って……式でも挙げようかっていってんの」
「え」
「あ? え、ってナンダ、えって」
「や、だってその」
ウィンリィは恥ずかしそうに目を伏せる。
「なんで急に、そんなこと? だって、ほら、もうちょっと旅に区切りがついてからとかなんとか、前言ってたなって……想って」
嬉しくないわけがない。でも、不思議に思う。そんなウィンリィの顔を眺めて、エドワードは「別に」と答える。
アイリスに見せられた夢を思い出す。可能性なんてわからない。先のことなんてわからない。だからこそ強く思った。未来を共有する約束はさっさと果たしたほうがいいのではないかと。さっさと彼女の人生を自分のものにしてしまったほうがいいんじゃないかと。
(ちょっと不安になっただけだなんて、言えるかっつーの)
しかし、「別に」とはぐらかされたウィンリィの表情が少し残念そうに一瞬だけ翳ったのを見て、エドワードは思い直す。
「あー…悪い、違う。今の、なし」
「え」
エドワードは仕切り直しだとばかりにウィンリィの青い瞳を覗き込む。言い訳も不安も要らなかった。伝えたいことは本当はいつだってシンプルだ。エドワードは率直に告げた。
「―結婚しよう、ウィンリィ」
ウィンリィの空色の瞳が皿のようにまあるくなり、まるで花開いたように明るい表情に変わる。
「……はい」
彼女の返事に、よし、とエドワードはぐっと拳を握る。そんな彼にウィンリィは苦笑した。
「一体何回あたしに返事させる気?」
「何回でも」
「なにそれ」
変なの、と言ってウィンリィはなおも笑った。そんな彼女の笑顔をひと目見て、エドワードは静かに言った。
「これからは」
「?」
「これからは、思ったことは思ったように言うようにしようぜ」
「? なにそれ?」
「なんでもいーから」
ウィンリィは小首を傾げて、でも、と苦笑いする。
「そんなことしたら、あたし達すぐ喧嘩になっちゃう」
「それでいい」
「それでいいって?」
「喧嘩。―たくさんしようぜ」
「何、急に」
きょとんとするウィンリィに、俺はな、とエドワードはひどく生真面目な顔で言った。
「俺は、鈍い。たぶん、そんなつもりねぇけど、結構ひでえこと平気で言う」
「……」
「悪気ないけど、……悪気ねぇからって甘えないようにしたい。……ど、努力はする。だから、お前も、言いたいことがあったらはっきり言え」
「……」
彼が何を言っているのか。―ウィンリィはようやく心当たりを思い出す。先日のパーティーの夜の話をしているのだ。
「……わかった」
ウィンリィはやんわりと頷く。
「あたしも、ちゃんと言うようにする」
よし。エドワードはまたしても拳をぐっと握った。
「これで仲直りってやつだな」
「? あんた、そんなの気にしてたっけ?」
喧嘩ならよくしている。でもいつの間にかだいたい仲直りしているものだ。いちいち言葉では言わない。
「ああ、気にする。大いにな」
「なんで?」
ウィンリィは無邪気に訊いてきた。あーもう、とエドワードは苛立つ。こんなベッドの上で押し倒されておいて、なんでこいつはこんなにあっけらかんとしているのだろう。たまらなかった。思いつめたようにエドワードは口をへの字に曲げたまま、ぼそっと言う。
「―もう、我慢、限界なんだよ」
「え?」
ウィンリィが目を丸くするよりも早く、エドワードはウィンリィの身体の上に覆いかぶさる。
キスをする。お互いに唇を重ねて、離して、また重ねる。ついばむように唇を吸い合って、ぬるりと舌を絡め合う。
「ん……んっ……んっ……」
唇を吸いあいながらお互いに髪を触りあう。ウィンリィはエドワードの首に腕を絡め、彼の金髪をゆっくりと梳く。エドワードもまたウィンリィの顔にかかる髪を梳きあげながら、何度も何度もキスをおとした。
「―なんか、久しぶりな気がする」
「そう?」
「そう」
お前、ずっと口きいてくれなかったから、と言うと、あら、とウィンリィは反論する。
「あんただって、あたしのこと無視してたじゃない」
「んなことねーよ」
「ううん。無視した」
「してねーよ。してたのはそっち」
「違うわよ。してたのはあんたでしょ」
「……あーーもう! そういう話したいんじゃねーんだ俺」
エドワードはそう言うと、カプとウィンリィの唇を食む。
「んッ……!」
や、とウィンリィが声にならない悲鳴をあげる。彼の舌がねとりと腔内に侵入してくる。
「んッ…ぅんッ…」
ちゅぷ、ちゅぷと湿った音が響いて、ウィンリィは顔を横に振る。彼が唇を貪ってくる。口の中に舌を入れて蹂躙してくる。ぬれた舌先がぬるぬると腔内を嘗め回し、歯の裏すらくすぐってくる。
「すんげ、やらしい顔」
顔を離すと、エドワードが不敵な笑みを浮かべていたずらめかしたように言う。
「キスだけで、そんなに気持ちよかった?」
「―…やだ」
やらしい顔なんかしてないもん、とウィンリィが顔を隠そうとすると、隠すなよと手をとられる。
「や。っ離して」
「いやだ」
言ったろ? とエドワードは低く呟く。
「本当のこと、言えって」
「……」
「言わなかったら、言わせるまでだけど」
そう言って、エドワードはおもむろに枕にかけてあったカバーをひきちぎる。
「!?」
なに、と目を丸くしているウィンリィの手首を頭の上のところでひとつにまとめると、エドワードはひきちぎったシーツでその手首を縛る。
「や……」
「本当のこと言わないと、一個ずつ増やすよ」
おしおきを。そう言い置いたエドワードは薄く笑っている。もう止まらなかった。ずっと我慢してたのだ。こんな美味しそうな彼女がいて、普段通りに振る舞えというほうが無理である。
「―あッ……」
エドワードはおもむろにウィンリィの上着を脱がせると、シャツをたくしあげる。ふるっと零れ落ちてきた白い乳房を、エドワードは遠慮なしに両手で触れる。柔らかくしなる丸い稜線を両の掌で包んで、ゆっくりと揉み始める。
「……っん……」
ウィンリィは目をぎゅっと閉じたままされるがままになる。膨らみの頂にエドワードが親指を伸ばして、ゆっくりと撫でまわすように刺激し始めると、ウィンリィの息は徐々に荒くなっていく。エドワードはそんなウィンリィの様子をじっくりと伺いながら、くにくにと指先で押しつぶすように乳首を刺激し、膨らみを下から持ち上げるように回し揉む。
「きもちい?」
「……ん……」
エドワードは薄く笑う。別に答えなくたっていい。聞くよりも先に彼女の身体が応えている。
ぴんと立ち始めた胸の頂を、伸ばした舌先でねっとりと舐める。ウィンリィの声がひときわ高く鋭くあがる。ここがすきだということをエドワードは知っている。だから執拗に、そして優しく舐めてやる。
「あっ……あっ…あ……」
短く途切れるような呼吸を聞きながら、エドワードは乳首を舌先で舐め、押し潰し、吸いあげる。そのピンク色に染まった乳首の天頂が彼女の一番弱いところだ。舌をうんと尖らせて、優しくつついてやる。そのたびにウィンリィは甘い声をあげた。
乳房を食みながら、エドワードは言葉でも嬲る。ちゅるちゅると音を立てながら乳首を吸い、その合間に彼女の足の間に手をねじ込んだ。
「―すっげ、濡れてる」
下着はすでにべとべとだ。やだ、とウィンリィが羞恥の声をあげるが構わない。指先が濡れていくのを感じながら、エドワードは下着の上からゆっくりとそこをすりあげる。人差し指で溝を這うように上下にこすれば、じょじょに下着の中にぷっくりと膨らんで硬くなってくるものが現れる。エドワードは薄く笑って、狙いをそこに定める。
「わかる? すっげ、膨らんでる」
「いちいち…言わないで…よ……ぁっ」
ウィンリィは困ったように声をきれぎれに呟き、喘ぐ。
「や……ぁ…や、だ、ぁ……あ…、あ…ぁ」
エドワードの指先が彼女の敏感な鳥のくちばしを捉える。下着の上からちょっと擦っただけで、ウィンリィは淫らに喘ぐ。もっと反応がみたい、とエドワードはゆるやかに指の動きを速めていく。ひくつく陰核を人差し指と中指で軽く挟むと、上下左右に優しく揺するように刺激を与えた。
「あ……あ……やっ……あぁ…!」
泣き喘ぎながらウィンリィは左右に首を振る。やめてと言わんばかりに手で彼の動きを阻もうとした。しかし、両手は縛られていて、思うように動かせない。彼女の動きを察知したエドワードは、縛った両手を彼女の頭の上に縫い止めるようにして手で押さえつけると、空いた片手で陰核の刺激を続行する。
「―すげぇ、びしょびしょ」
「や…ぁ…だ……」
「下着、もう着れねぇな」
言いながらほくそ笑んで、エドワードは下着のサイドからぐいと指をねじ込んだ。
とろとろに溢れている蜜壷に、指先だけ触れると、そのままぐっと指を中に押しいれた。
「……ッ!!」
ウィンリィの身体がしなる。彼女の身体を抑えつけたまま、エドワードは指を出し入れする。指を入れてすぐ、陰核の裏あたりに当たる場所を指の腹でこすこすと音が出るほどにこすり付けた。
「やぁ……ッ!! そこ、だめ……!」
拒絶するようにウィンリィが首を振る。足を閉じようとするがエドワードはそうさせない。腕で強引におしのけ、蜜壷への刺激をさらに加速させる。
「ここ。……ちょっと硬くて、ざらざらしてて、ぷにぷにしてて……」
エドワードは息をひとつも荒げずに淡々と説明する。指の腹で刺激しながら、中の蜜を掻きだすようにぐしゅぐしゅと出し入れする。
「や、やっ……やめ、やめ、て……!」
「やだよ」
誰がやめるか。そう言って、エドワードは彼女の手首を抑えつけていた手を緩ませる。身体を移動させて、彼女の足の間に顔を近づけた。スカートを脱ぎ捨てさせて、下着さえもさっさと取り払う。白すぎる太ももに顔を埋めて、舌を這わせる。もちろん、蜜壷に指を出し入れさせることもやめない。
「あっ…あっ…あぁ…ぁ…!」
ウィンリィの腰がびくつき、跳ねる。太ももの内側が弱いのだ。もちろんエドワードは知っている。舐めつくすように白い肌に舌を這わせ、彼女の陰部に鼻先を掠める。すぐにはしゃぶりつかない。焦らすように何度も何度も鼻先だけでかすめるように触れる。
「やぁ……エ、ド…ぉ……」
腰をくねらせながら、ウィンリィが泣いた。そこでようやくご褒美をやる。舌にたっぷりと唾液を絡ませると、エドワードは彼女の一番敏感な場所へちゅうと吸い付いた。
「あぁっ……ぁ、ぁあん…!」
ひときわ高い声をあげてウィンリィが身をくねらせる。ぴちゃぴちゃと子犬がミルクを舐めるような音を立てながら、エドワードは彼女の陰核のあたりを上下に擦るように舐めまわした。同時に蜜壷に差し入れた指をぐるりと回して、彼女の弱い部分を刺激する。
だめ、とウィンリィは身を固くしながら背をしならせる。腹部のところからじんじんと痺れて熱をもっていく。熱はどんどん膨らんでいくのだ。ちゅ、ちゅ、とエドワードに吸われ、指で押すように刺激されて、ウィンリィはあっさりと陥落してしまう。
「や……ぁ…ぁあああ……!」
いっちゃう、と小さく悲鳴をあげて、ウィンリィの身体は弓なりにそりあがった。
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